チラシ裏の雑記

toNight ーノベル風ポエムー その3

どうやらこの町は殆どの建物が民家やちょっとしたお店なっている様で、
全ての建物が魔物からの襲撃に遭ったとみて良さそうだった。
この町の情報を得るため幾らか彷徨った甲斐あって、他の民家とは異質な建物に辿り着き
まるでその建物を見回るかの様にコウモリが飛んでいる光景を確認し、そこが恐らく"ターゲット"のいる場所なのだろうと見当をつけた。

魔物は倒せば倒すほど"ポイント"が貯まる、と赤い玉に表示された後、"ポイント"の使い道も確認できた。
「生き還りこの部屋から脱出:1000」「アイテムと引き換える:物価」「執行権を得る:500」
いずれも相当のポイントが必要だったので、倒せる魔物は倒してしまいたい。
しかし、"ターゲット"との戦闘は避けられない。体力は、温存するべきだ。

隙を見て敷地内に潜入し、目の前にある大きな窓が開いていないか調べてみるも、残念ながら鍵がかかっている様で開かなかった。
正面の出入り口を見張っている魔物と戦闘しても良いが、その後の展開がかなり厄介な事になるなんて想像に難くないものだ。
どうしたものかと考えている矢先、ガシャーンッ!と、大胆不敵な音が自分の位置とは真逆の方向から辺りに鳴り響き、
周りの羽音が一斉に慌ただしく音の方向へ向かっていくのがわかった。
一瞬迷ったが、この混乱に乗じるしかないと急いで正面出入り口に向かい魔物を打ち倒し、そのまま建物の中に入る事には成功した。
ぱっと見だが正面玄関周りには扉の前以外に魔物は居なかったので自分の存在はバレて居ないだろう、後に正面の見張りが倒されている事に誰かが気づいたとしても、第2の侵入者については断定出来ないだろう、という我ながら大雑把な見積もりである。

建物内はコウモリの騒ぎ声や衝突音の様な音が頻りに鳴り響いているものだから、足音が目立たないと踏んで小走りで移動する。
ガラスの音とは逆方向の部屋から探索を進めていると、ここは研究所の様だという事が先ほどから目に入る"なにか"の経過観察資料の様な書類から伺えたが、それよりも身に纏った白衣が赤く染まった職員達の残骸が目立つ。
魔物は大体人間を骨ごと喰うので残骸が残らない事が多いが、ここに居る職員達はなにか大きな爪の様なもので切り裂かれて居る様に見え、"ターゲット"への警戒心と恐怖心が増していくが止まる訳にもいかない。
などと考えていた所、ある異変に気付いた。辺りが静かになっている。
慌てて身を掲げるが特に羽音も聞こえない。一体どうしたというのだろうか。
隠れてじっとしている訳にもいかない。気配を殺し別の部屋の扉を開けると、そこに広がって居た光景に我が目を疑った。

夥しい数のコウモリの残骸。それは床に転がっていたり壁に突き刺さっていたりと様々だが、どれも既に既に事切れている様だった。
急に全身に広がる緊張感に吐き気すら覚えたが、なんとかそれを飲み込み更に奥へ視線を移しながら部屋に入ると、そこには甲冑を纏った赤髪の女が机から取ったと思われる本を片手で開き、目を通している姿があった。この地獄絵図の様な部屋を創作した張本人と思われるその女の佇まいに思わず息を飲む。
魅力的だった。ただそこで本を読んでいるだけなのに目が離せず呼吸も忘れて居ただろう。そんな自分の気配は当然相手は把握して居た様でゆっくりと視線が動き目が合う。柄にもない。脈拍が一気に上がった。

「あ・・その、アンタ、こんな所で何をしているんだ?」

我ながらなんとも気の利かない一言だったと思う。相手はため息ものであっただろうが、そんな隙は一切見せず、鋭い眼光に自分は捕らわれたままパタン、と、本が閉じられた。

「まだ生き残りが居ましたか。残念ながら、今回はそういうミッションではありませんので。」

自分なんて初めから居なかったかの様にスタスタとすれ違い部屋から出て行く姿に立ち尽くし、それ以上話しかける事も出来ずに女の気配は消えてしまった。
その立ち振る舞いに圧倒されて居たのも確かだが、それよりも
「お前は私の気まぐれで生かしているに過ぎないのだから、邪魔はしないで」
という圧力に尊敬と畏怖が入り混じった、今まで感じた事のない感情に心底戸惑った結果であった。
"ターゲット"が彼女でない事に心底安堵したものだが何故そう思ったのかまでは、わからないままだった。

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