チラシ裏の雑記

チラシ裏のメモ ー1ー

目の前に、随分と縮んだ自分がいる。
ぼんやりとした思考の中で理解できる事は限られて居て、なんなら自分のいる場所もよくわからないし、なんで目の前の少年を自分の小さい頃だと認識しているのかも酷く曖昧だった。
ところが、意識を向けてみればなんて事はない事だと気づくもので、ときたま地面から舞い上がる砂埃の奥から聞こえる、リズミカルな金属の軋む音から察するに、ここは子供の頃によく訪れた公園だった。
案の定、2つあるうちの向かって左側を勢いよく揺らす茶髪の少年と、それを怒った表情で見てる銀髪の少女が居たからか、小さな自分は駆け足でブランコに駆け寄り二人と挨拶を交わすと、茶髪の少年は勢いよくブランコから飛び降り、見事に顔から着地することに成功した。

「失敗しないと、成功しねーんだよ!」

自分は勿論、小さな自分も彼の鼻から垂れた鼻血について何も言及して居ないのだが、どうやら小さい自分は未熟者だった様で顔に出てしまって居たらしい。もしくは露骨に呆れた顔と視線を向ける少女に対しての言葉だったのだろうか。ふと、少女が小さい自分の方に顔を向けた一瞬、彼女の瞳がギョッとして、再びあきれ顔になった事から察するに、どうやら小さい自分の後ろにいる彼らよりも一回り大きい3人の少年の怒りに心当たりがある様だ。よく見ると、3人のうち1人は口元が切れている様に見えるし、茶髪の少年はまるで新しいおもちゃでも見つけたかの様にニヤニヤと楽しそうなので、察した小さい自分は図体の大きい三人組の一番手前にいた少年に渾身の打撃を打ち込み、茶髪の少年も後に続いた。
茶髪の少年はひたすらに前向きでとにかく明るく、まるで太陽みたいな人間だと思って居たので、そんな彼と一緒にいる自分を例えるなら月だな、といつも劣等感を感じると同時に自分とここまで波長が合う人間も中々居ないとも感じて居た自分の心境は、周りからは想像出来ない程複雑だった。

「おい!やりずぎだぜ!!」

ハッと、自分の目の前に視点を改めて合わすと、泣きながら気絶してしまったと思われる少し腫れた人間の顔があり、利き手は誰かに抑えられ、またやってしまった事を認識した。
物心ついた頃から、決して暴力は嫌いではなかったし、いけない事だとも思って居ない。話し合うのは面倒だし、相手から突っかかってくるのだから仕方がないだろう。たとえ暴力が暴力を生んでいるのだとしても、売られた喧嘩を買わない理由が一先ず無いので買い続けてきた。今思えば単純に生まれ育った街が荒んで居ただけなのかもしれないが、荒んだ街の荒んだ所に住んでいるという事は、当然うちも荒んでいて、それを不幸だと思った事は無かったが母が変わっていく姿や父の怒声にはうんざりしていたし、だから暴力の渦中にいる時は全てを忘れて相手に憎悪を心置き無くぶつける事がーーーー

「ごめんライザ・・・またやりすぎちまった・・・・」
未熟な俺は未熟ながらに、憎悪に任せて暴力を振る舞う事はいけない事だと認識していて、自分を止めてくれるライザの声には思考を止めてでも耳を傾ける様にしていた。ぼんやりと後ずさりして少しでも標的から離れようと試みながら顔を上げると、やれやれといった表情をしたライザと心配そうなレインの顔が見えたのでまたやりすぎていた事をハッキリ理解した。ライザは俺を対等に見てくれていたが、当の俺は常々劣等感と戦っていながらどうしたら対等だと胸を張れる様になるのかと考え、いつか近い未来ライザと戦いたいと思う様になった。その時は少なくとも、こんな未熟な頃の俺では無い。何故なら、ライザと戦うに伴って憎悪をぶつけてしまっては何も変わらない。ライザは本当に凄いヤツだから、きっと俺の無限に湧き出る憎悪を受け止めてくれるだろうが、それは果たして対等か・・・・?

俺は、成長しなければならない。

意識が覚醒を始めている感覚が訪れ、どうやら自分は眠っていたのだと判りはじめてきたところで夢は終わりだ。
もうどんな夢を見ていたか思い出せなさそうだが、思い出せないといえば結局俺は誰だったんだろうか、そして何かを達成できなかった時の様な虚無感が心に残っていて、非常に気持ちが悪い。

-チラシ裏の雑記